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陸上特殊無線技士の難易度と独学で合格できるお勧め参考書・勉強方法

陸上特殊無線技士

IoT の普及や 5G 無線通信の実用化に向けて、無線・通信業界では無線通信基地局の施工・保守管理を行う無線技術者の需要が高まっています。

この記事では、2023 年(令和5年) の陸上特殊無線技士試験 (一陸特・ニ陸特・三陸特) に独学で合格するためのお勧め参考書と合格者の勉強方法、試験の難易度と合格率の推移をご紹介しています。

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第一級陸上特殊無線技士 (一陸特) の受験記

今となっては陸上特殊無線技士の上位資格である第一級陸上無線技術士のほか多数の資格を持っている私ですが、当時はまだ危険物取扱者 乙種4類の資格しか持っておらず、とにかく取れる資格をどんどん取っていこうと考えていた頃に受験しました。

初めて受験する理系・技術系の資格だったので勉強開始前は不安もありましたが、いざ勉強を始めてみると、 出題される問題はほとんどが暗記問題で、理系・文系の区別など関係のない問題ばかりでした。

無線工学の科目では計算問題が数問出題されますが、簡単な電気回路や対数計算などの問題ばかりで拍子抜けしたことを覚えています。

難易度についての詳細はこのあとご紹介する「陸上特殊無線技士の難易度」の節に書いていますが、理系科目が得意な私にとっては、三陸特・二陸特を飛ばしていきなり一陸特を受験しても苦労せずに合格できる程度の難易度でした。

陸上特殊無線技士の試験概要

陸上特殊無線技士の種別

陸上特殊無線技士には第一級から第三級までの3種別に国内電信級という種別を加えた全4種別があります。

本記事では国内電信級については取り扱いません。

第一級第二級第三級陸上特殊無線技士は、それぞれ一陸特(いちりくとく)・ニ陸特(に―)・三陸特(さん―)という略称で呼ばれます。

一陸特二陸特三陸特を取得することにより操作できる無線設備の範囲は次の通りです。

種別 操作範囲
一陸特 1. 陸上の無線局の空中線電力500W以下の多重無線設備(多重通信を行うことができる無線設備でテレビジョンとして使用するものを含む。)で30MHz以上の周波数の電波を使用するものの技術操作2. 前号に掲げる操作以外の操作で二陸特の操作の範囲に属するもの
二陸特 1. 次に掲げる無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作

イ 陸上の無線局の空中線電力10W以下の無線設備(多重無線設備を除く。)で1606.5kHzから4000kHzの周波数の電波を使用するもの
ロ 陸上の無線局のレーダーでイに掲げるもの以外のもの
ハ 陸上の無線局で人工衛星局の中継により無線通信を行うものの空中線電力50W以下の多重無線設備

2. 三陸特の操作の範囲に属する操作

三陸特 陸上の無線局の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次に掲げるものの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作1. 空中線電力50W以下の無線設備で25010kHzから960MHzまでの周波数の電波を使用するもの

2. 空中線電力100W以下の無線設備で1215MHz以上の周波数の電波を使用するもの

電波法にはこのように記載されているのですが、具体的にどういう仕事で陸上特殊無線技士の資格が必要になるのか分かりづらいですよね。

陸上特殊無線技士の資格が必要とされる仕事や就職・転職市場での需要は「陸上特殊無線技士の就職・転職市場での需要は?求人や職場の例を紹介!」の記事にまとめていますのでご興味があればご覧ください。

陸上特殊無線技士の試験科目

一陸特・二陸特・三陸特の全ての種別において、次の2科目を受験します。

  • 無線工学
  • 法規

試験問題数と合格点は以下の通りです。

種別 科目 問題数 問題形式 満点 合格点 時間
一陸特 無線工学 24 多肢選択式 120 75 180分
法規 12 60 40
二陸特 無線工学 12 60 40 60分
法規 12 60 40
三陸特 無線工学 12 60 40 60分
法規 12 60 40

各種別の問題数、合格基準は次の通りです。科目合格の規定はありませんので、一度の試験で「無線工学」と「法規」の2科目両方に合格しなければなりません。

陸上特殊無線技士の難易度

合格率の推移から見る難易度

一陸特・二陸特・三陸特の合格率は次の通りです。

合格率一陸特二陸特三陸特
平成20年度25.0 %70.2 %81.6 %
平成21年度29.5 %77.5 %82.2 %
平成22年度31.2 %73.6 %86.2 %
平成23年度30.1 %74.5 %81.7 %
平成24年度30.1 %73.1 %85.5 %
平成25年度30.8 %74.5 %83.5 %
平成26年度30.3 %76.6 %85.4 %
平成27年度32.6 %77.9 %87.1 %
平成28年度29.5 %74.0 %89.4 %

二陸特と三陸特はめちゃくちゃ簡単

合格率を見ればわかるように、二陸特の合格率は常に 70 % 以上三陸特は 80 % 以上と、落ちる人より合格する人のほうが多いという非常に簡単な試験です。

二陸特と三陸特は似通った問題ばかりで、難易度にはほとんど差がありませんので、二陸特と三陸特のどちらを受験しようか迷っている方はニ陸特を受験すると良いでしょう。

両科目ともに「無線工学」の科目では計算問題が出題されますが、その内容は中学の理科レベルの「並列回路の合成抵抗を求めよ」といったような簡単なものです。

法規」の科目も覚えることが非常に少ないうえに、過去問の類似問題ばかり出題されるという難易度の低い科目です。

一陸特は計算問題が少しだけ難しくなる

一陸特の合格率は 30 % 前後を推移しており、二陸特・三陸特と比べると大幅に合格率が下がります。

この原因は、「無線工学」の科目に出題される計算問題の難易度が二陸特・三陸特より若干高くなることにあります。

たとえば、電気回路の問題では、二陸特・三陸特で出題される「抵抗だけ・コイルだけ」の単純な回路ではなく、1 つの回路に「抵抗・コイル・コンデンサ」が組み合わさった、いわゆる RLC 回路の電流やインピーダンスを求める問題が出題されます。

また、二陸特・三陸特では出題されない「対数 (log)」を用いた計算問題も出題されます。

いずれも理系・文系に関係なく高校普通科の 1 年生で習う内容なのでそれほど難易度の高いものではありませんが、「インピーダンス」 や「対数」といった理系っぽいワードに苦手意識がある方は少し時間をかけて勉強しなければなりません。

法規」の科目については、二陸特・三陸特の難易度とほとんど変わらないため、合格するのは簡単でしょう。

陸上特殊無線技士の勉強方法

第一級陸上特殊無線技士 (一陸特) の勉強方法

一陸特は参考書 1 冊問題集 1 冊、計算問題が苦手な方はこれに加えて計算問題の練習に特化した参考書を 1 冊準備して試験対策を行いましょう。

まずは「無線工学」の科目の勉強方法です。

無線というモノは目に見えないため、初めて勉強する人にとってはイメージが湧きにくい存在です。

いきなり問題集や過去問に取り掛かるのではなく、まずはイラストや写真が豊富な参考書を1冊やり込み、電波の伝わり方やアンテナの形状などのイメージを頭に叩き込みましょう。

参考書を 1 冊やり終えたら問題集に取り掛かります。

問題集に出てくる単語・用語に分からないものがあれば参考書の索引を利用して勉強し直すという方法で少しずつ知識を定着していけば合格レベルに達するでしょう。

また、一陸特の無線工学では計算問題が全 24 問中 5 問 ~ 7 問出題されます

計算問題が苦手だからといって対策せずに全て捨ててしまうと、その他の問題をほぼ全て正答しなければ合格できなくなってしまいます。

試験では毎回 2 問程度、全く対策が出来ていない初見殺しの問題が出題されるため、計算問題以外を全て正答するというのは現実的ではありません。

電気回路の計算問題や対数を使った計算問題は、コツをつかめばそれほど難しいものではありません。このあと紹介する計算問題の練習に特化した参考書を使って理解を深め、5 ~ 7 問全て正答とは言わずとも、4 問程度は正答したいところです。

一陸特を受験する方の中には、一陸特に合格したら工事担任者電気工事士などの取得を目指す方も居ると思いますが、これらの資格を受験する際にも絶対に必要になる知識ですので、ここで手を抜かずにしっかり理解しておけば今後の資格取得も楽になりますよ!

法規」の科目については、参考書で概要を学び、問題集を反復演習することで出題傾向がつかめます。特別な勉強方法は必要ありません。ひたすら解いて覚えるのみで合格できます。

二陸特と三陸特の勉強方法

二陸特と三陸特は「無線工学」の計算問題も中学レベルの簡単なものですし、「法規」も反復演習ですぐに合格レベルに達することができます。

このあと紹介するお勧めの参考書1冊問題集1冊で試験対策を行えば合格できるでしょう。

陸上特殊無線技士のお勧め参考書

第一級陸上特殊無線技士(一陸特)の参考書

やさしく学ぶ 第一級陸上特殊無線技士試験 改訂 2 版

2014 年 6 月に発行されて高い評価を得ていた「やさしく学ぶ」シリーズの改訂 2 版です。

今回の改訂では、図やイラストを大幅に増やし、よりわかりやすいテキストになっています。また、最近の出題傾向にあった問題に対応済みです。

まずはじめに手をつける参考書としては最適です。

第一級陸上特殊無線技士試験 集中ゼミ 第 3 版

私が一陸特に合格した際に使用した問題集の改訂第 3 版です。

Amazonのレビューには「これ一冊でも合格できるという」評価もあるほどの定番の問題集です。

計算問題の解説も非常に丁寧なので理解しやすく、絶対に準備したい一冊です。

第一級陸上特殊無線技士国家試験 計算問題突破塾

上記で紹介した第一級陸上特殊無線技士試験 集中ゼミ 第 3 版だけでは計算問題が不安な場合には、本書で計算問題を徹底して練習しましょう!

受験者が一番苦労する「無線工学」の計算問題を徹底的にやさしく解説された参考書です。

解答するためのヒントとともに、詳細な計算過程を掲載。複雑な計算を効率よく行うためのノウハウとテクニックが凝縮されています。

第二級陸上特殊無線技士(二陸特)の参考書

やさしく学ぶ 第二級陸上特殊無線技士試験

二陸特の試験対策でも、まずは「やさしく学ぶ」シリーズで無線に関する基礎知識を身に着けましょう!

図やイラストが豊富に掲載された、初学者にもわかりやすいテキストです。

第二級陸上特殊無線技士試験問題集 (合格精選 240 題)

こちらもまた、Amazonのレビューで「これ一冊で合格できるという」と評価されている定番の問題集です。

計算問題も途中式を省くこと無く丁寧に解説されているため理解しやすいです。

第三級陸上特殊無線技士(三陸特)の参考書

やさしく学ぶ 第三級陸上特殊無線技士試験

三陸特の試験対策でも、まずは「やさしく学ぶ」シリーズで無線に関する基礎知識を身に着けましょう!

図やイラストが豊富に掲載された、初学者にもわかりやすいテキストです。

第二級陸上特殊無線技士試験問題集 (合格精選 240 題)

三陸特には問題集が出版されていませんので、二陸特の問題集を使用して勉強しましょう。

本記事内にも書きましたが、二陸特も三陸特も難易度に差は無いので、三陸特の受験者が二陸特の問題集を使っても難しすぎるなんてことはありません。

Amazonのレビューで「これ一冊で合格できるという」と評価されている定番の問題集です。

おわりに

個人的には、二陸特も三陸特も難易度は変わらないので、資格取得後に扱える無線設備の範囲が狭い三陸特をわざわざ受ける意味は無いと思います。

一陸特については、本記事では計算問題対策の重要性を強調しましたが、理系科目が得意な人にとってはなんてことのない簡単なものです。

理系科目が苦手な方でも、お勧め参考書の項で紹介した計算問題対策の参考書でじっくり勉強すれば確実に合格できます。

陸上特殊無線技士の資格を取得したい方の参考になれば幸いです。

受験者の皆さんが合格できることを祈っています。