この記事では、陸上特殊無線技士の資格の就職・転職市場での需要や、陸上特殊無線技士を保有している人はどのような職場で働いているのか、求人サイトではどんな求人があるのか、などを詳しく紹介します。
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陸上特殊無線技士ってどんな資格?
世間ではIoTの普及や5G無線通信の実用化に向けて、無線・通信業界では無線通信基地局の施工・保守管理を行う無線技術者の需要が高まっています。
陸上特殊無線技士は、無線技術者として活躍したい人がまず取得するべき、いわゆる登竜門的な資格です。
陸上特殊無線技士には第一級から第三級までの3種別に国内電信級という種別を加えた全4種別があります。本記事では国内電信級については取り扱いません。
第一級・第二級・第三級陸上特殊無線技士はそれぞれ略称があり、一陸特(いちりくとく)・ニ陸特(に―)・三陸特(さん―)と呼ばれていますので、本記事でも同様に略称を用いる場合があります。
扱える無線設備の範囲
それぞれの種別の陸上特殊無線技士が扱える無線設備の範囲は電波法で規定されており、次の表の通りです。
種別 | 操作範囲 |
---|---|
一陸特 | 1. 陸上の無線局の空中線電力500W以下の多重無線設備(多重通信を行うことができる無線設備でテレビジョンとして使用するものを含む。)で30MHz以上の周波数の電波を使用するものの技術操作
2. 前号に掲げる操作以外の操作で二陸特の操作の範囲に属するもの |
二陸特 | 1. 次に掲げる無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
2. 三陸特の操作の範囲に属する操作 |
三陸特 | 陸上の無線局の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次に掲げるものの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
1. 空中線電力50W以下の無線設備で25010kHzから960MHzまでの周波数の電波を使用するもの 2. 空中線電力100W以下の無線設備で1215MHz以上の周波数の電波を使用するもの |
なんだかよく分からない
何ワット (W) とか何ヘルツ (Hz) とか言われてもよく分かりませんよね。
実生活のどのような場所で陸上特殊無線技士の資格が活かされているのかまとめてみました!
陸上特殊無線技士を活かせる職場ってどんなところ?
陸上特殊無線技士の資格はどんな職場で必要なのか、その例をまとめました!
ここで挙げているものはあくまで一例で、無線局の出力などの要件によっては、ここで挙げている種別より上位の種別・資格が必要な場合があります。
第三級陸上特殊無線技士 (三陸特) を活用できる職場・業務
第三級陸上特殊無線技士 (三陸特) の資格が必要な職場・業務の例は次の通りです。
- 警察無線・消防無線・鉄道無線などの基地局
- MCA無線(第三者無線)の制御局
- 携帯電話・PHSの通信機能抑止装置の設置局
- 業務としてドローンを利用し、一定の周波数等を用いて空撮などを行う場合
三陸特はこのような比較的小規模な無線通信を行う業務で必要とされます。
2.のMCA無線(第三者無線)とは、利用者が複数の無線チャネルを制御局の指令により共同使用するシステムのことで、全ての無線通信は制御局を中継します。この制御局には三陸特以上の無線従事者資格の保有者が専任されなくてはなりません。
この文章だけだとイメージが湧かないかもしれませんが、タクシー無線を思い浮かべてください。
タクシー乗車中に他のタクシー同士の会話が無線機から聞こえてくるのを聞いたことがある方も多いと思います。
この場合、MCA無線の利用者であるタクシードライバーは無線従事者資格を持っている必要がありませんが、MCA無線の制御局=タクシー会社の本社などに居る管理者が三陸特以上の資格を持っているということになります。
3.の通信機能抑止装置とは、無線通信を通信妨害するための装置、いわゆるジャミング装置のことです。コンサートホールや劇場、病院の病室・集中治療室などで用いられます。
通信機能抑止装置を設置して運用するためには無線局の免許が必要で、三陸特以上の無線従事者資格の保有者が専任されなくてはなりません。
4.については、全ての業務用のドローン空撮において三陸特の資格が必要というわけではありません。
具体的には、最大出力 1 [W] を超える場合、もしくは 5.7 GHz 帯を利用する場合に必要となります。
ドローンは今後ますます多彩な分野で利用されるでしょうから、ドローン操縦技術に加えて三陸特以上の資格を持っていれば、思いもよらない就職先や転職先が見つかるかもしれません。
第ニ級陸上特殊無線技士 (二陸特) を活用できる職場・業務
第二級陸上特殊無線技士(二陸特)の資格が必要な職場・業務の例は次の通りです。
- 中短波帯を使用した路側放送よる同報通信を用いる業務
- 気象レーダー、速度違反取締装置など無線標定用のレーダーを用いる業務
- 三陸特の操作の範囲に属する操作
1.の路側放送とは、高速道路などにおいて道路状況などの交通情報を送信する、いわゆるハイウェイラジオのことです。
電波法令上は路側通信という特別業務として規定されていて、利用する空中線電力や周波数から、二陸特以上の無線従事者資格が必要です。
2.のレーダーについては、用途が多岐にわたるため、「二陸特の資格で扱える」とまとめてしまうのは少々乱暴ですが、あくまで一例として参考にしてください。
警察では無線電話のみではなくスピード違反取締りにレーダーを使用するため、警察学校で二陸特の養成課程が行われているそうです。
消防用の電磁波人命探査装置や、スポーツ用のスピード測定器など、警察用以外でかつ適合表示無線設備であれば無線従事者資格は不要です。
第一級陸上特殊無線技士 (一陸特) を活用できる職場・業務
第一級陸上特殊無線技士 (一陸特) の資格が必要な職場・業務の例は次の通りです。
- 多重無線設備(携帯電話基地局など)やテレビ中継局の施工や保守・点検業務
- テレビ放送事業用の FPU、STL、SNG などの操作
- 二陸特・三陸特の操作の範囲に属する操作
一陸特になると業務の規模も大きくなり、人工衛星との通信業務などにも携わることが可能になります。
なんといっても、1.の多重無線設備の施工や保守・点検業務を行う無線技術者の需要が高まっており、5G 無線通信の普及に向けた無線基地局の施工・更新のほか、防災・被災地支援のための防災無線基地局の施工・管理など業務の幅が広がっています。
そのほかにも、一陸特はテレビ放送に関する様々な業務や、衛星管制などの業務にも需要があります。
陸上特殊無線技士の転職・就職市場での需要・求人内容は?
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高速道路の設備の維持管理
普段なんとなく利用している高速道路ですが、利用されている技術は非常に広範囲で高度なものばかりです。
- SA/PA、料金所に設置されている受配電設備や自家発電設備などの電気設備
- 道路状況などの交通情報を送信する無線通信設備
- カメラ・センサ等のデータをやりとりする有線通信設備
- 道路上やトンネル内の事故による火災に対応するための消防設備
- 道路・橋梁・トンネルなどを維持管理する幅広い建設・土木の技術
陸上特殊無線技士の資格を持っていれば、無線通信設備に関する業務を足がかりに、高速道路に関する幅広い業務に携わることが可能になるのではないでしょうか。
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無線基地局の施工・運用管理
無線基地局設備・装置の計画、設計、建設管理、運用保守、通信テスト、評価などの業務に携わります。陸上特殊無線技士の花形とも言える業務かもしれません!
最初のうちは先輩に同行して無線基地局の設置に関する業務を行い、やがて独り立ちして基地局の設置・建築に関するスケジュール管理などまで行うようになるでしょう。
基地局の設置にすっかり慣れた頃からは、無線基地局を設置するための現地調査や土地保有者との打ち合わせなどの業務を行う会社もあるようです。
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