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この記事では、第一級~第四級海上無線通信士試験の難易度と合格率、試験対策をする上での過去問の重要性を、私が第一級海上無線通信士 (一海通) に独学で合格した経験を基に解説しています。
海上無線通信士試験の難易度と合格率の推移
一海通と三海通の合格率は平均して 40 % 程度で、四海通にいたっては平均 50 %を超えています。
したがって、合格率だけ見た場合の難易度は「易しい」部類の試験に見えるのですが、海上無線通信士試験の難易度は合格率の数値だけでは語れません!
既に海上無線通信士試験に向けて勉強を始めている方は「合格率の高さの割に難しそうだぞ…」と感じているかもしれません。
しかし、受験を検討している段階の方には “合格率が高いのに難易度も高い” という理由が理解できないでしょう。
ここからはその理由を説明していきます。
ある程度合格する自信のある人しか受験しない試験
合格率が 40 % もあるなら、合格率が 30 % 台の危険物取扱者 乙種 4 類 の試験より簡単なんじゃない?
…なんて思ったら大間違いです。
結論から言うと、海上無線通信士試験は合格する自信のある人しか受験しない試験だから合格率が高いのです。つまり、受験者の母集団のレベルが高いのです。
普通は受験者に合格する自信があるか無いかなんて判断できません。
しかし、海上無線通信士試験には「英語」の科目があるためそれが可能です。
ぶっちゃけて言ってしまうと、海上無線通信士試験に限らず、無線従事者国家資格の英語以外の科目については過去問の「丸暗記」のような勉強方法で合格できてしまうのですが、英語についてはその丸暗記が通用しません。
しかも、英語の科目には筆記試験だけではなくリスニング試験もあり、リスニング試験で一定以上の点数を取れなかった場合は筆記試験が満点でも不合格となる “足切り” の制度があります。
英語の科目を、しかも筆記だけでなくリスニングも受験しなければならないという時点で、英語が全くできなくて勉強する気も無い人は合格できないため、そもそも受験することを諦めるのです。
結果、受験するのは英語が得意な人か、得意ではないけれど試験に向けて勉強してきた人だけなので母集団のレベルが高くなり合格率が上がります。
難易度が高いと感じるか低いと感じるかは英語の学力次第
本来、無線工学の基礎、無線工学 A、無線工学 B の科目 (以下、まとめて無線工学と呼びます) は非常に難易度の高い試験なのですが、前述した通り、無線従事者国家資格は過去問の丸暗記で合格できる試験なので簡単に攻略されているというのが現状です。
しかしながら、英語の科目には過去問の丸暗記は通用しません。
よって、海上無線通信士試験の難易度が高いと感じるか、低いと感じるかは英語の学力次第だと言えるでしょう。
私自身も英語が苦手だったため、一海通の英語の試験対策にはかなり苦労しました。
私が一海通に合格した際の英語の勉強に用いた参考書や勉強の流れについては以下の記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。
電気通信術の難易度
英語英語と言っているが、電気通信術の難易度はどうなんだい?難しいんじゃないの?
海上無線通信士の電気通信術の試験は難しくないです。試験対策にもそれほど時間はかかりません。
電気通信術の科目が難しいのは総合無線通信士試験で、モールス電信の技能が必要になるため生半可な覚悟では合格することができません。
しかし、海上無線通信士試験の電気通信術ではモールス技能は必要ありませんし、「直接印刷電信」は簡単なタイピングの試験なのでほとんどの受験者は練習不要で、「電話」はフォネティックコードを覚えなければいけませんが、それほど時間がかかるものではありません。
電気通信術の試験内容、試験当日の実施の流れ、電気通信術に合格するための練習方法、受験する上での注意点などは以下の2つの記事で詳しくご紹介していますので、ここでは軽く触れる程度にとどめておきます。
受験するなら一海通か三海通もしくは四海通。中途半端な二海通は不要。
英語の試験には受かる気がしないけれど、海上無線通信士の資格が欲しいという方は、英語の科目が出題されない第四級海上無線通信士 (四海通) をお勧めします。
ちなみに、一海通 ~ 三海通には英語が出題されて、四海通には出題されない理由はこちらです。
ついでに補足ですが、ネット上の Q&A サイトやブログなどで「四海通は第一級海上特殊無線技士 (一海特) の上位資格」と記載されているのを目にすることがありますが、四海通は一海特の上位資格ではありませんので注意してください。
一海特の上位資格は三海通です。
無線従事者国家資格の上下関係はいろいろとややこしい部分があるので、そのうち別記事で詳しく解説しようと思います。
では次に、一海通~三海通の難易度を比較してみましょう。
この 3 つの種別の試験科目を比べると、一海通と二海通は全く同じ試験科目であるのに対して、三海通は科目数が少ないです。
この表の通り、三海通は無線工学に関する科目が少ないため、明らかに一海通・二海通と比べると難易度が下がります。
国際通信が可能な海上無線通信士資格が欲しいという方は三海通から挑戦するのも良いでしょう。
なお、以下の記事で説明していますが、三海通と第一級陸上無線技術士 (一陸技) を持っていれば、全科目免除で一海通の資格を取得できる制度があります。
さて、最後に一海通と二海通の比較です。
さきほどの表に示した通り、受験する科目数は全く同じですので、無線従事者規則から試験科目の詳細を引用してみます。
英語・法規・電気通信術は全く同じ問題なので、無線工学についてのみ引用しました。
ご覧いだたくと分かる通り、試験の出題範囲は全く同じなのですが、二海通には全て「~の概要」という文言がついています。
このことから、一海通と二海通に難易度の差があることは明らかで、実際の試験問題を見ても一海通の方が難易度は高いのですが…
この記事内で何度も書いている通り、無線従事者国家資格の試験は過去問の使い回し問題が多数出題されるので、難易度の差などあって無いようなものなのです。
一海通も二海通も、過去問解説集を使用して対策するのが合格への最短ルートとなりますので、この 2 種別のどちらを受験するか迷っている方は、中途半端な二海通は受験せず一海通を受験することをお勧めします。
以下の記事では、私が一海通に合格した際に使用したお勧めの参考書などをご紹介していますので、併せてご覧ください。
海上無線通信士と陸上無線技術士の難易度の比較
陸上無線技術士の無線工学の試験科目及び内容は以下の通りです。
この表と、さきほど示した海上無線通信士の試験範囲の表を見比べてみてください。
出題される単元は全て同じで、
- 第一級陸上無線技術士 (一陸技) のみ「~の詳細」という文言がついている
- 第二級陸上無線技術士 (二陸技) と 第一級海上無線通信士 (一海通) には文言が付与されず
- 第二級海上無線通信士 (二海通) には「~の概要」という文言がついている
以上のことから、陸上無線技術士と海上無線通信士の無線工学の難易度を比較すると次のようになります。
あくまでこれは無線工学のみの難易度の比較で、この記事内にも書いている通り海上無線通信士試験には英語や電気通信術の科目もありますので単純な難易度の比較は難しいです。
陸上無線技術士試験の受験を検討されている方には、以下の記事が参考になるかもしれません!