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情報技術に関する基本的な知識・技術を問う基本情報技術者試験は、IT業界で働く人はもちろん、IT業界未経験の学生から社会人まで幅広い層が挑戦する資格試験です。
平成の時代は基本情報技術者試験といえばそれなりの難易度の試験で、合格していれば情報技術やプログラミングの初歩的な知識を持っている人だと認識されていました。
ところが、令和になり CBT 方式の試験が開始され、試験制度の改定が行われると、「基本情報技術者試験の難易度が下がった」「基本情報技術者試験は簡単になった」というネット記事や SNS での発言が見られるようになりました。
この記事では、CBT 方式開始後の基本情報技術者試験の難易度が低下した・簡単になったと言われる理由について、合格率の推移と試験内容・CBT 方式の特徴などを基に解説します。
基本情報技術者試験の合格率の推移
CBT 方式開始後に基本情報技術者試験の難易度が低下したという話が本当かどうか検証するため、まずは合格率の推移を見ていきます。
CBT 方式開始以前の合格率 (~令和元年秋期)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成27年度春期 | 46,874人 | 12,174人 | 26.0 % |
平成27年度秋期 | 54,347人 | 13,935人 | 25.6 % |
平成28年度春期 | 44,184人 | 13,418人 | 30.4 % |
平成28年度秋期 | 55,815人 | 13,173人 | 23.6 % |
平成29年度春期 | 48,875人 | 10,975人 | 22.5 % |
平成29年度秋期 | 56,377人 | 12,313人 | 21.8 % |
平成30年度春期 | 51,377人 | 14,829人 | 28.9 % |
平成30年度秋期 | 60,004人 | 13,723人 | 22.9 % |
平成31年度春期 | 54,686人 | 12,155人 | 22.2 % |
令和元年度秋季 | 66,870人 | 19,069人 | 28.5 % |
CBT 方式開始以前の5年間(平成27年~令和元年)の合格率の推移はこの表の通りで、20 %~30 %の範囲で推移しており、平均合格率は 25.2 % です。
誰でも受験できて合格率 25 %の試験というと、難関ではないが簡単には合格できず、それなりの対策をしなければならない程度の難易度です。
CBT 方式開始後の合格率 (令和2年~)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和2年10月期 | 52,993 人 | 25,499 人 | 48.1 % |
令和3年春期 | 32,549 人 | 13,544 人 | 41.6 % |
令和3年秋期 | 52,879 人 | 21,190 人 | 40.1 % |
令和4年春期 | 46,072 人 | 18,235 人 | 39.6 % |
令和4年秋期 | 55,548 人 | 19,798 人 | 35.6 % |
こちらは CBT 方式開始後の合格率の推移で、年に2回のペーパー試験(春期・秋期)の受験者数・合格者数に CBT 方式で実施された試験(上期・下期)の受験者数と合格者数を計上した合格率を示しています。
この5回の試験の平均合格率は 41.0 %で、明らかに CBT 方式開始前の合格率より上昇しています。
さらに、令和5年からは CBT 方式の受験者のみの月別の統計データも公開されています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度4月 | 10,513 人 | 5,928 人 | 56.4 % |
令和5年度5月 | 9,724 人 | 5,322 人 | 54.7 % |
令和5年度6月 | 9,141 人 | 4,802 人 | 52.5 % |
令和5年度7月 | 9,506 人 | 4,712 人 | 49.6 % |
令和5年度8月 | 7,812 人 | 3,779 人 | 48.4 % |
CBT 方式の受験者のみの合格率はさらに高く 50 %前後で推移しています。
誰でも受験できる試験で合格率 50 %というと、全く対策をせずに合格できるほど簡単ではないが、参考書を使って勉強すれば誰でも合格できる程度の難易度であると言えます。
基本情報技術者試験の難易度が低下したと言われる理由
ここからは、基本情報技術者試験の難易度が低下したと言われる理由を解説します。
理由は大きく分けると以下の2点です。
- CBT 方式は受験者の都合に合わせて柔軟に受験できるため合格しやすいから
- 2023 年4月の試験制度改定に伴う出題内容の変化によって対策しやすくなったから
それぞれ具体的に説明します。
そもそも CBT 方式の試験は合格しやすい
基本情報技術者試験の難易度が低下したと言われる理由の1つ目は「CBT 方式は受験者の都合に合わせて柔軟に受験できるため合格しやすいから」です。
CBT 方式には受験者にとって有利な点が2つあります。
- 自分の都合に合わせて試験日を予約することができる
- 予約した試験日を変更することができる
いつでも受験できる CBT 方式なら、しっかり試験対策を行って合格を確信できる状態になってから試験日を予約して受験することが可能です。
さらに、予約した試験日を変更できるため、試験日に急な用事が入ったり勉強が進んでいなくて合格できるか不安な場合には試験日を変更して先送りにすることができるのです。
以上の点が、基本情報技術者試験の難易度が下がったと言われる理由の1つでしょう。
試験制度改定によって対策しやすくなった
基本情報技術者試験の難易度が低下したと言われる理由の2つ目は「2023 年4月の試験制度改定に伴う出題内容の変化によって対策しやすくなったから」です。
基本情報技術者試験は 2023 年4月に改定が行われ、試験範囲や出題形式が大幅に変更されました。
科目A(旧・午前問題)は試験範囲の変更は無く、出題形式が変更されました。
具体的には、試験時間が短くなり、問題数が減りました。この変更により1問あたりにかけられる時間が微妙に短くなりました。変更前は1問あたり 1.875 分でしたが、変更後の科目Aは 1.5 分で解かなければなりません。
これは一見難化したように見えますが、科目Aは一部の計算問題を除くと大半が知識問題で、過去問を解いていれば設問を見た瞬間に正しい選択肢が分かるほど単純な問題ばかりなので、この変更が難易度に与える影響はほとんどないと考えられます。
大きく変わったのは科目B(旧・午後問題)です。
出題範囲が「情報セキュリティ」と「擬似言語」の2分野のみとなり、改定前の5分野(必須2分野+選択3分野)と比べると大幅に狭くなったことで対策が容易になりました。
また、出題割合は情報セキュリティ2割、擬似言語8割と、擬似言語の出題割合が圧倒的に高く設定されています。擬似言語を集中的に対策しておけば情報セキュリティ対策はほどほどか最悪捨ててしまっても合格できるという状況であることも対策の容易さに拍車をかけています。
さらに、出題内容にも変更が加えられています。改定前の旧・午後試験では長文問題が出題され文章読解力を求められる場面がありましたが、改定後の科目Bは短文の問題しか出題されず解きやすくなりました。
以上の点が、基本情報技術者試験の難易度が下がったと言われるもうひとつの理由でしょう。
本来あるべき難易度に戻った?
ここまでに説明した様々な事実から、どうやら基本情報技術者試験の難易度が下がったというのは確かなようです。
個人的な考えですが、今回の難易度低下でようやく本来あるべき難易度に戻ったのではないかと思います。
改定前の基本情報技術者試験は、プログラミングが苦手な方にとっては応用情報技術者試験より難易度が高いという主張がネット上で散見されていました。
ITパスポート試験のような「入門」レベルから一段階上の「基本」レベルにステップアップしたい方にとっては、難易度に差がありすぎて挑戦しづらかったわけです。
CBT 方式の試験の提供開始と 2023 年4月の改定によって、名実ともに「基本」レベルの難易度となり、情報技術の基本を学びたいより多くの方に門戸を開く形になったのではないでしょうか。
おわりに
本記事が基本情報技術者試験の受験を検討している方の参考になれば幸いです。
IT未経験者でもしっかりと対策をすれば確実に合格できる試験ですので、受験を検討されている方はぜひ挑戦してみてください。
基本情報技術者試験のお勧めの参考書と勉強方法は「基本情報技術者試験に独学で合格できるお勧め参考書と勉強方法」でご紹介しているので併せてご覧ください。
情報セキュリティマネジメント試験や応用情報技術者試験を目指す方は以下の記事もよろしければ参考にしてください。