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この記事では、2022 年(令和4年)現在の技術士 第一次試験の科目ごとの難易度と合格率の推移について、著者が技術士 第一次試験 (情報工学部門) に独学で合格した経験を基に解説しています。
著者が情報工学部門に合格した際に使用した参考書や勉強方法は「技術士 第一次試験に独学で合格できる参考書と勉強方法」の記事にまとめていますので、よろしければ併せてご覧ください。
技術士 第一次試験の合格率の推移
平成22年度からの技術士 第一次試験の全部門の平均合格率は以下の通りに推移しています。
申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成22年度 | 27,297 | 21,656 | 8,017 | 37.0% |
平成23年度 | 22,745 | 17,844 | 3,812 | 21.4% |
平成24年度 | 22,178 | 17,188 | 10,882 | 63.3% |
平成25年度 | 19,317 | 14,952 | 5,547 | 37.1% |
平成26年度 | 21,514 | 16,091 | 9,851 | 61.2% |
平成27年度 | 21,780 | 17,170 | 8,693 | 50.6% |
平成28年度 | 22,371 | 17,561 | 8,600 | 49.0% |
平成29年度 | 22,425 | 17,739 | 8,658 | 48.8% |
平成30年度 | 21,228 | 16,676 | 6,302 | 37.8% |
令和元年度 | 22,073 | 9,337 | 4,537 | 48.6% |
令和2年度 | 19,008 | 14,594 | 6,380 | 43.7% |
平成20年代前半は部門ごとの合格率に大きな差があったため、全部門の平均合格率を大きく変動させる原因となっていました。
平成27年度からの平均合格率は 35 %~ 50 % の範囲で安定しています。
これはあくまで全部門の平均合格率ですので、部門ごとに見るとこれとは違った傾向が見られる場合もあります。
各年度の申込者数・受験者数・合格者数・合格率などの詳細な数値は以下の公式ページから閲覧可能ですので、受験される部門のデータを確認されると良いでしょう。
技術士 第一次試験の難易度
技術士 第一次試験に合格する難易度は「易しい」レベルでしょう。
部門によっては合格率が 60 % を超えるなど、受験資格が不要で誰でも受験できる国家試験の中ではかなり合格しやすい部類の試験であると言えます。
試験問題はそこそこ難しいのに、なぜこんなに合格率が高くなるのでしょうか。
その理由は、技術士 第一次試験には3つの「合格させるための措置」が盛り込まれているからだと考えています。この点について説明していきます。
1. 合格基準が低い
多くの国家試験では「正答率 60% 以上」が合格基準とされています。
宅地建物取引士試験(宅建)や日商簿記試験、気象予報士試験など、全体の 70% 以上を正答しなければ合格できない試験も数多く存在します。
一方、技術士 第一次試験の合格基準は「正答率 50% 以上」とされています。
回答したうち半分が正答していれば合格となる、低い合格基準が設定されているのです。
技術士 第一次試験の試験科目は「基礎科目、適正科目、専門科目」の3科目から成り、それぞれの回答数と合格に必要な正答数は以下の通りです。
- 基礎科目 … 回答数 15 問 / 正答数 8 問
- 適性科目 … 回答数 15 問 / 正答数 8 問
- 専門科目 … 回答数 25 問 / 正答数 13 問
これは受験者にとって非常に有利な措置です。
2. 試験問題が選択制である
基礎科目では群ごとに6問中3問を、専門科目では全 35 問中 25 問を選択して回答する選択制となっています。
難しそうな問題はパスして解けそうな問題だけを選択できるのですから正答率が高くなって当然です。
なお、適性科目だけは出題される 15 問全てを回答しなければなりません。
3. 試験問題が過去問の焼き直し問題ばかり
試験問題の多くは過去の試験で出題された問題の数値を変えただけだったり、選択肢の順序を変えただけなので、過去問を繰り返し解いておけば試験対策は容易です。
合格させるための試験であることは明らか
上記の1から3の措置を組み合わせると、「大半が過去問の焼き直しである問題のうち、解けそうな問題だけを選択でき、そのうち半分が正答していれば合格となる試験である」と言えます。
これだけ受験者に有利な措置がとられている試験は他に類を見ないもので、合格率が非常に高いことにも納得がいきます。
受験者のレベルもそこそこ高い?
推測ですが、技術士を受験する層は、受験する部門に関連する資格を持っている人や実務経験のある人が多数を占めるのではないでしょうか。
電気電子部門の受験者なら電気主任技術者試験(電験)に合格している人、情報工学部門なら情報処理技術者試験(応用情報技術者試験や情報処理安全確保支援士試験など)に合格している人など、元々その分野に対する知識が多少ある人が受験していることも合格率が高くなる要因の一つでしょう。
科目ごとの難易度
基礎科目
基礎科目では次の5つの分野が出題されます。群ごとに6問中3問を選択して回答します。
- Ⅰ群 … 設計・計画に関するもの
- Ⅱ群 … 情報・論理に関するもの
- Ⅲ群 … 解析に関するもの
- Ⅳ群 … 材料・化学・バイオに関するもの
- Ⅴ群 … 環境・エネルギー・技術に関するもの
問題の難易度は簡単なものからやや難しいものまで様々ですが、受験者の得意分野によっては対策ナシで解けるレベルの問題も多いです。
私の例を上げると、数学と情報分野は得意なのでⅡ群とⅢ群はほぼ対策なしで挑み、選択した6問を全て正答できました。一方、化学の素養が無いので、Ⅳ群はしっかり対策をして臨みました。
Ⅰ群は用語の問題と簡単な計算問題が出題されます。2点以上は取りたいですね。
Ⅱ群は、以下の情報処理技術者試験などに合格できる程度の知識があれば難しくなく、むしろ得点源になるので確実に3点取りたいところです。
情報分野が苦手な方でも、過去問をしっかり抑えておけば2点は取れるでしょう。
Ⅲ群は微積分や力学の問題が出題されるため、数学や物理が苦手な方にとっては難しく感じるかもしれませんが、基本的な問題ばかりで過去に類似問題が出ている場合が多いので、過去問をしっかり解けるレベルにしておけばそれ以上の対策は必要ないでしょう。2点以上は取りたいですね。
問題が選択制かつ合格基準が 50% の時点で、まともに対策をしていれば不合格になるような科目ではないです。
適性科目
適性科目は他の2科目と違って問題が選択制ではなく全問に回答する必要があります。
過去問を解いてみると意外と初見でも解ける問題が多く、「これはぶっつけ本番でも合格できるんじゃないか?」という手応えを感じることがありますが、この考えが命取りになってしまうかもしれません。
「技術士 第一次試験に独学で合格できる参考書と勉強方法」の記事に詳しく書いていますが、近年の試験の適性科目ではあやふやな知識では回答できない形式での出題が増えているため、過去問だけでも良いので対策は必須です。
一次試験に不合格になっている方の中には、この科目に油断して落ちてしまっている方が多いのではないでしょうか。
専門科目
専門科目は 35 問中 25 問を選択して回答します。
専門科目というだけあって、自分の専門外の分野の問題はちんぷんかんぷんで難易度が高く見えますが、得意分野を受験する場合はそれほど対策に時間がかかる科目ではないでしょう。
この科目も、選択制かつ 50 %の正答率で合格できますので、自分の専門分野を受験していてまともに対策をしている場合は不合格になるような科目ではありません。
他方、全くの専門外の分野に挑戦する方にとっては難易度が高く、一次試験の合否を分ける科目になるでしょう。
第一次試験は通過点でしかない
第一次試験はあくまで技術士資格を得るための通過点なので、これくらいは合格できなければ話にならないという最低限の基準を設定しているのではないかと考えています。
しっかり対策をすれば確実に合格できる試験ですので頑張ってください。
この記事がこれから受験される方の参考になれば幸いです。
著者が情報工学部門に合格した際に使用した参考書や勉強方法は「技術士 第一次試験に独学で合格できる参考書と勉強方法」の記事にまとめていますので、よろしければ併せてご覧ください。
また、技術士 一次試験は合格すれば官報に氏名が掲載される数少ない試験の一つです。
「合格者の氏名が官報に掲載される資格一覧と官報購入時の注意点 」の記事に詳細をまとめていますのでご興味があればご覧ください。